人生と仕事について知っておいてほしいこと

松下幸之助（述）
PHP総合研究所（編）

序にかえて

「ビジネスパーソンにとって最も重要な責務は何か？」
という質問に松下幸之助は、
まあ、簡単にいうと、みんなに愛されあることですね。

ビジネスマンはみんなに愛されないといかんですよ。
あの人がやってはるのやったらいいな、
物を買うてあげよう、と、こうならないといかんですよ。
そうなるには、法師の精神がいちばん大事です。
法師の精神がなかったら、あそこで買うてあげようという気が起こらない。

そうですから、ビジネスマンの一番大事な勤めは愛されることである。
愛されるような仕事をすることである。
それができない人は、ビジネスマンに適さないです。
必ず失敗する、と、
こういうことです。

あくせくせずに悠々と、自分の運命に従って進んでいく。
自分の運命を生かしていく。
悪心がないならば、その人のもって生まれた運命が完全に生きる。
その生涯は、強く正しく幸福なものである。

欲望は生きる力である。
その満たし方、戒め方が適切であり適当であれば、いかなることもできるのではないか。

人間というものは、欲望にかられて、それにとらわれてしまう。
だからこそ素直な心になりたい。
素直な心が働くことで、人間は賢く、聡明になっていく。

世の中はいっさいが対立しつつ調和している。
宇宙の森羅万象、たとえば地球と太陽でさえ、対立しつつ調和している。
人間も同じく、言うべきことを言い、そのうえで「なるほど」と調和する事が大事である。
決して事なかれ主義に陥ってはならない。

かつてないほどむずかしい時代、見方を変えれば血沸き肉躍る面白いこの時代に生を得たという喜びを感じて、
芝居を演ずる名優のごとく、
互いの人生を演じていきたい。