パーミションマーケティング

パーミションマーケティング ブランドからパーミションヘ

Yahoo!副社長 セス・コーディン著

阪本啓一訳

序文

「パーミション・マーケティング」の基本となる考え方はとてもシンプル。

われわれ人間は等しくある一定の時間しか持っていない。

だからこそ、その貴重な時間をどのようにうまく使うのかということは、

みんなにとって重要な問題だ。

 

生活者としての私たちは、とどまるところを知らない新しい提案や誘惑、

値下げのお知らせ、マネーバック保障制度の広告などに

取り囲まれて暮らしている。

 

しかし、何をどうしようと、

売るということに対しての見込み客の「パーミション(許容)」を得たのなら、

非常に価値の高い資産を得たのと同様で、

いかなるライバルが現れても、あなたから顧客を奪い取ることはできない。

見込み客の協力と参加を得たのだから。

 

はじめに

私が昔思っていたこと、

「広告というものは、ほとんど役に立たない。

効果を測定したり、テストしたりすることは簡単ではない。

予測できない。なのに高くつく」

というの事実だ。

本当に素晴らしい製品がまずいプロモーションのおかげで

市場から消えていくのを絶望的な気持ちで見てきた。

 

しかし、テクノロジーは広告アプローチを変えた。

ニューヨークのあるカトリック司教がこういったそうだ。

「もしイエスが現代にいて地球上を歩きまわっているとすれば、

彼はきっと電子メールアドレスを持っているに違いないと確信しています。」

と。

 

 

1.お金では解決できないマーケティングの危機

90年ものあいだ、マーケティング担当者たちはあるひとつのマーケティング手法のみに頼っていた。

私はそれを「土足マーケティング」と呼んでいる。

つまり、広告を見るものが何を考えていようが(何も考えていまいが)、

おかまいなしに、心の中に土足でずかずかと上がりこむ、

おなじみの手法である。

 

広告は「私たちはなぜ注意を払うか」という点が重要なのではない。

なのに、マーケティング担当者は、

私たちがいかにすれば広告の方を見るようになるか、

だけが関心事のようである。

 

土足マーケティングの効果を測ってみよう。

昨夜観たお気に入りのテレビ番組の間に流れたコマーシャルの

スポンサー名をすべて書き出してみよう。

昨夜ネットサーフィンしたときに見つけた広告のスポンサー名を、

すべて書き出してみよう。

いかがだろうか。

もし10%以上思い出せたとしたら、あなたは例外である。

 

土足マーケティング担当者が直面している問題をようやくしてみる。

1.人間の注意力には限界がある。

2.人間の使えるお金には限界がある。

3.商品が増えれば増えるほど、おかねは商品にはまわらないようになる。

4.もっとも注意をひき、お金をおびきよせるため、土足マーケティング担当者はもっと予算を使わなければならなくなる。

5.マーケティング露出が増える、ということはそのままま支出が増える、ということを意味する。

6.しかし、すでに見てきたように、お金を使えば使うほど、混乱はますます増加する。

7.ジレンマ。お金を使えば使うほど、効果は薄まる。効果が薄まるほど、さらにお金を使う。

 

 

2.パーミション・マーケティング 広告が再び力を取り戻す方法 ―有効な広告は期待され、適切でなければならない―

パーミション・マーケティングでは、生活者は、自ら進んでマーケティング担当者のターゲットになろうとする。

自ら進んでターゲットになったひとたちに話しかけることによって、

パーミション・マーケティングは伝えたいマーケティングメッセージに注意を寄せてもらうことができる。

 

パーミション・マーケティングにおける生活者は、次のような行動をとる。

まず、長期間にわたるインタラクティブなマーケティング・キャンペーンに

参加するように勧められる。

参加すると、生活者が欲しいと思うメッセージが次々と送られてくる。

これらの見込み客の70%があなたの送ったメッセージを読んでくれるのだ。

5%でも、1%でもない。

パーミション・マーケティングの特長は次の3つだ。

 

「期待される」

ひとはあなたからのメッセージを楽しみに待ってくれる。

 

「パーソナルである」

メッセージはダイレクトに個人に届けられる。

 

「適切である」

パーミション・マーケティングは生活者が興味を示したものについてのメッセージを送る。

 

パーミション・マーケティングで顧客になってもらうための5つのステップ

 

1.見込み客に、自発的に手を挙げるようなインセンティブを示す。

例)デートで言うなら最初のデートを誘うための時間・お金等・・・

 

2.見込み客から得た関心を使って、あなたの製品・サービスについて顧客教育を行う。

※一度注意を寄せることに合意した見込み客に製品について説明することは非常にたやすい。

 

3.見込み客がずっと「パーミション」を与え続けてくれるようにインセンティブを強化する。

※これも既に自己満足の独り言ではなく、双方向の対話だからたやすい。

 

4.生活者からもっと多くの「パーミション」を得られるようにインセンティブを磨く。

※顧客のことをもっと知り、更に新しいカテゴリーへと広げる。

 

5.時間がたつにつれて利益を生むように生活者行動を変えるよう、「パーミション」を高めていく。

※利益を生み出す状況まで押し上げる。

 

土足マーケティング担当者が、1,000人の見ず知らずの人に向けて

履歴書を送りつけて職を探しているとしたら、

パーミション・マーケティング担当者は、(1)ある1つの会社に的を絞り、

ネットワークを持ち、(2)相談に乗り、(3)その会社が彼を信用し、

(4)フルタイムのポジションを与えてくれるまで一緒に仕事をする。

 

パーミション・マーケティングは忍耐を必要とする。

忍耐強く・インフラ作りに精を出し、「パーミション」が花を咲かせるまで、

じっくり腰をすえて仕事を続けていかなければならない。

しかし、見合う以上の見返りが望めるのだ。

 

3.マス広告の進化史 ―マス広告がマス・マーケティング担当者を生み出した―

 

P&Gがクリスコを市場に出した時、まだ「タイム」誌も「ゼネラルホスピタル」誌もこの世になく、

広告を載せようがなかった。

信頼の置けるマスメディアがないので、P&Gはパーミション・マーケティングをつかうことにした。

まずは列車広告からはじめ、主要都市でお茶会を催し、現地の著名人を招いた。

もちろん、お茶会で出されるお菓子はクリスコで料理されたものである。

さらにP&Gは無料配布の料理本を発行し始め、

決して製品を売ろうとはしなかった。

興味のあるひとは、本の該当部分を見れば、料理方法と同時に、

クリスコの便利さも学ぶことになる。

そしえ料理本はたちまちのうちに「ベストセラー」となった。

 

ひとたびボールが転がり始めるやいなや、クリスコはこれだけに満足できず、

土足マーケティングにギアチェンジをしていった。

土足マーケティングのおかげで、ビックブランドはより大きく、支配力を持つようになった。

そして、これに更なる成功を得た結果、それからずっとこの手法を続けていった。

昔の様な効果は失っていることを見て見ぬふりをしながら・・・

 

多くの企業は、現在の自分たちを作ってくれた昔のマーケティング手法にこだわることだろう。

このこてゃ、新しく失うもののない新興の会社や

これまでとは全く違うやり方で顧客を獲得し、維持し続けることに柔軟に対応できる会社にとっては、

またとない大きなチャンスである。

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